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研究成果

ネギ萎凋病の抵抗性に関与する遺伝子群の特定に成功

―近縁種シャロットがもつ抵抗性をネギに導入することで国内初の抗性品種育成を目指す―

2017年8月22日

 公益財団法人かずさDNA研究所は、山口大学、東北大学、東京大学、東京農業大学と共同で、ネギ萎凋病(いちょうびょう)の抵抗性に関与する遺伝子群の特定に成功しました。

 ネギ萎凋病は、カビの一種が原因で起こる病気で、発病すると葉が萎(しお)れ、根に近い部分が飴色に変色して腐ります。夏場の高温期に多く発生し、西日本の青ネギ(葉ネギ)栽培では最も被害が大きい病害になっています。千葉県でも夏場の高温・多雨により、ネギ萎凋病の発生が見られることがあります。

 一方、東南アジアでよく栽培されているサイズの小さなタマネギで、香辛野菜として知られるシャロットは萎凋病抵抗性をもちます。シャロットはネギと交雑できるため、シャロットを用いてネギに萎凋病抵抗性を付与する研究が進んでいます。萎凋病感受性のネギと抵抗性のシャロットを掛け合わせた系統の研究から、シャロットの第2染色体に抵抗性に関与する遺伝子が存在することがわかってきました。

 そこで、この系統を用いて抗菌成分として知られるサポニン類の成合成経路中の遺伝子発現を網羅的に比較解析し、萎凋病抵抗性に関与する遺伝子群の特定に成功しました。現在は、シャロットの萎凋病抵抗性を導入したネギ品種を育成する研究が行われています。

 かずさDNA研究所では転写産物の配列解析を行い、ネギ属転写産物データベース(Allium TDB, http://alliumtdb.kazusa.or.jp)を作成しました。研究成果は、8月11日付の国際科学雑誌PLOS ONE電子版に掲載されました。

論文情報:
RNA-sequencing-based transcriptome and biochemical analyses of steroidal saponin pathway in a complete set of Allium fistulosum - A. cepa monosomic addition lines.
(ネギとシャロットのモノソーム添加系統の組合せにおける、ステロイドサポニン経路のトランスクリプトーム解析と生化学的分析)

Mostafa Abdelrahman1,2, Magdi El-Sayed2, 佐藤修正3, 平川英樹4, 伊藤 真一5, 田中啓介6, 峯洋子7, 杉山信男7, 鈴木穣8, 山内直樹1, 執行正義1

1 山口大学大学院 創成科学研究科(農学系学域)
2 エジプト アスワン大学理学部植物学科
3 東北大学大学院 生命科学研究科
4 かずさDNA研究所 ゲノム情報解析部グループ
5 山口大学 農学部 生物資源環境科学科
6 東京農業大学 生物資源ゲノム解析センター
7 東京農業大学 農学部
8 東京大学大学院 新領域創成科学研究科

<PLOS ONE誌のURL> http://journals.plos.org/plosone/
<論文のURL> https://doi.org/10.1371/journal.pone.0181784

<詳細につきましては以下の資料をご覧ください>
ネギ萎凋病資料(PDF:477KB)