[第2シリーズ] 第3回
「DNAから探る日本列島人の起源と成立」Q & A
回答者:斎藤成也先生
【 質問1 】
なぜ渡来系弥生人は、九州に入ったのちに、鹿児島の方に南下するのではなく、近畿地方の方に向かって行くのでしょうか?
【 回答1 】
鹿児島方面に南下した人々もいたと思います。南方と東方の両方に移動していったのでしょう。
【 質問2 】
アイヌ人とヤマト人との混血の時期をDNA解析では、どのようにして推定したのでしょうか
【 回答2 】
集団進化のモデル系統樹を仮定して、そこに混血したイベントを加えました。混血の時期は、現代アイヌ人のゲノムが100%縄文人ゲノムの由来だと仮定して、データ解析をしました。
【 質問3 】
弥生時代に渡来した人は何人ぐらいで、その時にヤマト人は何人いたと考えられますでしょうか。ヤマト人に残っている縄文人ゲノムの割合が少なすぎる印象があります。
【 回答3 】
弥生時代に渡来した人は百万人とも言われています。その時期にヤマト人はせいぜい十数万人だったと思われます。このため、
ヤマト人に残っている縄文人ゲノムの割合が少ないのです。
ヤマト人に残っている縄文人ゲノムの割合が少ないのです。
【 質問4 】
母系遺伝系統については「ミトコンドリア」「ピロリ菌」のゲノム解析での分析結果をご紹介いただきましたが、父系遺伝系統についても「Y染色体」のゲノム解析などで分析されているのでしょうか? また、「ミトコンドリア・イブ」の父系版「Y染色体・アダム」の存在は推定可能でしょうか?
新旧日本人の混血進行経緯が父系と母系でも分析できれば、日本人の成り立ちの有り様がより立体的にわかるのではないかとワクワクしています。
新旧日本人の混血進行経緯が父系と母系でも分析できれば、日本人の成り立ちの有り様がより立体的にわかるのではないかとワクワクしています。
【 回答4 】
日本人のY染色体のゲノム解析もおこなわれました。「Y染色体・アダム」の存在は推定可能ですが、あまり意味はありません。多数の祖先の男性にそれぞれY染色体があるので、自分の父系をたどるといっても、それら多数のY染色体のひとつにたどりつくだけだからです。
【 質問5 】
歴史的な人類のルーツを知ることは、それぞれの民族・文化を研究する上で役に立つと思いますが、この研究結果は他にはどんな事に利用されるのですか?
【 回答5 】
人類のルーツを知ることは、自然人類学の研究に大きな影響を与えています。
【 質問6 】
ネアンデルタール人とデニソワ人以外の旧人は見つかっているのでしょうか?今後見つかる可能性も含めて,斎藤先生のお考えをお聞かせください。
【 回答6 】
ネアンデルタール人とデニソワ人以外の旧人は発見されていません。今後見つかる可能性は、もちろんあります。
【 質問7 】
ゲノム配列等化学的な分析に比べ、言語や文化を基にした民族の相互関係はより流動的で捉えにくいものではないかと考える。相互補完的な役割は果たせるのか、あるいは切り離して考えた方がよいのか。
【 回答7 】
言語や文化は数量化しにくい性格を持つので、たしかに分析は難しいのですが、すこしずつ行われています。ゲノムデータ分析と相互補完的とまではいきません。
【 質問8 】
アフガニスタンが登場したのが意外でした。昔のアフガニスタンの人々は、どこからきたのでしょうか?
【 回答8 】
私は知りません。
【 質問9 】
DNA解析がここまで進んでいるにあたり、そのDNAの違いが体質や気質、病気などに関連付けた分析はあるのですか?
【 回答9 】
DNAの個体差を病気に関連付けた分析は多数ありますが、体質や気質は定義がはっきりしないので、DNAとの関連はあまり研究されてはいません。
【 質問10 】
私は、沖縄出身の父と千葉出身の母の子供なのですが、もし今回の講座と同じ遺伝子の検査を受けたら、ヤマトとオキナワの中間みたいな結果になるのでしょうか。
少なくとも両親は三世代は各々の土地に住んでいたヒトなので、それより前に混ざっていないとすれば、直近だけ混ざった事になるかと思うのですが、どういう座標に私がプロットされるのか興味があります
少なくとも両親は三世代は各々の土地に住んでいたヒトなので、それより前に混ざっていないとすれば、直近だけ混ざった事になるかと思うのですが、どういう座標に私がプロットされるのか興味があります
【 回答10 】
ヤマト人とオキナワ人の混血ということですから、ご推察のとおり、主成分分析をすれば、両者の中間に位置するでしょう。
【 質問11 】
1)古い人骨の歯からDNAを抽出されたことに驚いたのですが、DNA抽出可能な状態であるためには特別な条件があるのでしょうか。また、抽出の際に特別な処理が必要になるのでしょうか。
2)ゲノムの分布に基づいた人類の大陸移動の予測に興味を持ちました。地理的隔離などによるゲノムの分布から、大陸自体の構造変化が起ったかどうかも予測できるのでしょうか。
2)ゲノムの分布に基づいた人類の大陸移動の予測に興味を持ちました。地理的隔離などによるゲノムの分布から、大陸自体の構造変化が起ったかどうかも予測できるのでしょうか。
【 回答11 】
1)のご質問に対して:DNAが分子として長いあいだ保存されている条件としては、温度が低いこと、乾燥していることなどがあげられます。
2)のご質問に対して:人類の移動はたかだか過去10万年のスケールですが、大陸移動は数千万年のスケールなので、大陸自体の構造変化をゲノムの分布から推定することはできません。
2)のご質問に対して:人類の移動はたかだか過去10万年のスケールですが、大陸移動は数千万年のスケールなので、大陸自体の構造変化をゲノムの分布から推定することはできません。
【 質問12 】
大陸からの3段階渡来モデルによると日本列島にはアイヌ人、ヤマト人、オキナワ人、が住んでいて、西暦7世紀にヤマト人は日本人という呼称になり今日に至っていますが、別人種としてアイヌ人は良く聞きますがオキナワ人は聞きません。オキナワ人はどうなったのでしょうか?
【 回答12 】
オキナワ人は、旧石器時代から縄文時代を経て、弥生時代にいたるまでずっと琉球諸島に住んで来ました。そのあいだに、北方のヤマト人が南下してきて、当時のオキナワ人と混血し、現在のオキナワ人が形成されました。