第2回「ダーウィン—希代のナチュラリスト」
講師:渡辺政隆先生
サイエンスライター
東北大学 特任教授
同志社大学 客員教授
専門は科学史、進化生物学、サイエンスコミュニケーション
『ダーウィンの遺産』『ダーウィンの夢』『一粒の柿の種』『〈生かし生かされ〉の自然史』などの著書のほか、『種の起源』『ミミズによる腐植土の形成』(ダーウィン著)、『ダーウィン』(デズモンド、ムーア著)、『ダーウィンが愛した犬たち』(タウンゼンド著)、『沈黙の春』(カーソン著)など自然史・科学史関係の著訳書多数
配信期間:2025年6月20日(金)13時〜 6月30日(月)13時
チャールズ・ダーウィンの『種の起源』(1859)は、世界を変えた名著です。ダーウィンは、すべての生物は神によって創造され、昔から変わっていないという創造説が主流だった時代に、生物は共通の祖先から進化したと提唱しました。
ダーウィンの問題意識は、なぜこれほど多種多様な生きものがいるのかでした。そこで出した答えは、生物種は枝分かれを繰り返すことで多様化してきたというものでした。そしてその原動力として提唱したのが自然淘汰(選択)の原理です。生物種は、個体差を生み出す遺伝的な変異を抱えています。そこで、生存競争に勝つ上で有利な変異をもつ個体がより多くの子孫を残し、不利な変異をもつ個体は減る。ダーウィンはこの原理を自然淘汰と呼び、それこそが生物を進化させる原動力だと考えたのです。
その進化理論は、ともすると、弱肉強食,優勝劣敗の冷徹な理論だと誤解されてきました。しかしダーウィンは、生きものどうしの持ちつ持たれつの関係に心を奪われたナチュラリストでした。さまざまな生きものを観察し、それらが進化した仕組みに思いをはせ、解決すべき研究テーマの端緒を開きました。
本講では、ダーウィンの業績を振り返ると同時に、彼が残した宿題を後世の研究者がいかに解決してきたか、いくつかの例を紹介します。