第3回「分子進化の扉を開いた木村資生 - DNAから見える進化の新たな姿」
講師:五條堀孝先生
MaOI機構 研究所長
国立遺伝学研究所 名誉教授
国立成功大学 玉山教授(台湾)
アブドラ国王科学技術大学 名誉教授(サウジアラビア)
一般社団法人DNA鑑定技術研究所 理事長
配信期間:2025年8月15日(金)13時〜 8月25日(月)13時
「木村資生先生の中立進化説とその意義」
皆さんは、「進化」という言葉を聞くと、どのようなイメージを持たれるでしょうか?ダーウィンの自然選択説を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、日本が生んだ偉大な科学者、木村資生(きむらもとお)先生は、これとは少し異なる視点から進化を捉えました。それが**「中立進化説」**です。
木村先生は、遺伝子レベルでの進化を数学的に研究し、多くの突然変異のうち大半は生存競争に影響を与えない**「中立的な変異」**であると示しました。つまり、生物の進化は必ずしも「生存に有利な変異」だけで起こるわけではなく、偶然の遺伝的浮動(ランダムな変化)によっても進むのです。この考えは当時の生物学界に大きな影響を与え、現在の分子進化学の基礎となりました。
この理論の素晴らしい点は、DNA解析技術が発展した現代でも、多くの研究によって支持され続けていることです。例えば、私たちのDNAを詳しく調べると、人類の遺伝的多様性の多くが自然選択ではなく、この中立進化によるものであることがわかります。
木村先生の理論は、生命の進化を理解する上で欠かせないものであり、日本の科学が世界に誇る偉大な成果です。ぜひ、皆さんもこの驚くべき発見に興味を持っていただければと思います。