テーマ 14メンデル遺伝学だけではヒトの健康や行動を説明できません
メンデルの法則を農業に活かそうとすることに明らかな関心がありました。メンデルの考えはまた優生学運動にも利用されました。優生学の目標はよりよい子作りによって人類を改良することです。優生学者は“優れた”遺伝資源を持った人たちの間の結婚を奨励し、そして“遺伝的に不適格な”人たちが子どもを作るのを止めさせようとしました。
今では私たちは、複雑な形質には多くの遺伝子が関与することを知っていますが、優生学者は行動や精神疾患のような複雑な形質を説明するのに、単純な優性/劣性の図式を誤って使っていました。彼らはまた、人の成長に環境が与える効果を考えに入れていませんでした。アメリカでは出生を制限するための優生法[断種法]は、遺伝的な事実よりも社会的、政治的な偏見を反映していました。優生学による人間の生命の表現は、ナチスが追い求めた人種純化がもたらした恐ろしい結果により最終的に信頼を失いました。