テーマ 16ひとつの遺伝子はひとつのタンパク質を作ります
1902年、アーチボルド・ギャロッドは、遺伝性疾患であるアルカプトン尿症を“先天性の代謝異常”と説明しました。彼は、遺伝子の変異が排せつ液に関する生化学経路での特定の欠陥を引き起こすと提唱しました。この病気の黒い尿という表現型はこの変異が反映されたものです。
この仮説は、1941年にジョージ・ビードルとエドワード・テータムによって、単純なパンカビであるアカパンカビを用いて厳密に証明されました。最初に彼らは、放射線照射したカビは必須栄養素の産生能力を失い、それによってカビの生育が遅くなり、また止まってしまうことがあることを見つけました。そして、特定のサプリメントを供給することで生育を回復できることも見いだしました。彼らは、栄養素を合成するのに必要な酵素(タンパク質)が各々の変異で不活性化しているに違いないと推理しました。このようなことから、ひとつの遺伝子はひとつのタンパク質を作るための指示書を持っていると言えます。