テーマ 26RNAは最初の遺伝分子でした
1960年代には、メッセンジャーRNAが遺伝情報を保存する能力を持っていること、トランスファーRNAとリボゾームRNAが遺伝情報をタンパク質に翻訳しうる能力を持っていることが実験的に示されました。その20年後に行なわれた実験では、一部のRNAには自身の遺伝コードを自己編集する酵素としての機能があることも示されています。これらの結果は、2つの疑問を提起しました:1)なぜRNAは遺伝情報の流れの中で多くの役割を果たしているのだろうか? 2)もしRNAだけで十分な働きができるのならば、なぜDNAの中に遺伝情報をわざわざ格納するのだろうか?
RNAは遺伝分子として大きな能力を持っています。かつてはRNA自身で遺伝のプロセスを続けていく必要があったからです。今では、RNAが遺伝に関わる最初の分子であったこと、DNAが舞台に登場する前に遺伝情報を格納し発現するための基本的なしくみが発達していたことは確かなようです。しかしながら、一本鎖RNAは非常に不安定な分子で酵素によって容易に損傷を受けます。既存のRNA分子を倍加しリボース糖の代わりにデオキシリボース糖を使うことで、DNA分子は正確に遺伝情報を渡すためのより安定な形として進化してきたのです。