テーマ 38個体発生は細胞増殖と細胞死の調和で進行します

個体発生は細胞増殖と細胞死の調和で進行します。

 生物学的な意味での増殖とは、既に存在する細胞から細胞分裂(有糸分裂)によって、新たな細胞が生まれた結果起こるものです。組織または器官が一定の大きさに達すると、細胞は分裂を遅らせて休止期に入ります。この増殖と休止の細胞周期をコントロールしているのが、“チェックポイント”分子群です。これらは、1980-1990年代に酵母で、その後、他の真核生物でも解析されました。

 注目されるのは、正常な個体発生には健常な細胞が殺され排除される”アポトーシス“と呼ばれる過程が必要なことです。アポトーシスという現象を解く最初の糸口は、線虫(Caenorhabditis elegans)の詳細な研究から得られました。この生物は959個からなる成虫細胞の個々の発生過程が受精卵から追跡できます。細胞系譜の追跡により、胚発生の特定のタイミングで特定の細胞が死ぬようにプログラムされていることが分かりました。このプログラムの破壊は、がんの特性のひとつである細胞の過剰増殖を引き起こします。