第3回「新しい色の花を作る」

講師:田中良和先生

サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社
独立行政法人国立科学博物館植物研究部客員研究員

配信期間:2025年2月14日(金)〜 2025年2月25日(火)

 花の色は、花粉を運んでくれる昆虫など(ポリネーター)を呼び寄せるための「広告」の一つです。ポリネーターには好みがあり、ハチは青い花を好み、ハチドリは赤い花を好むといわれています。そのためか、植物の種によって特定の色の花を咲かせることが多く、たとえば、バラ、カーネーション、キクなどには青や紫系の色の花はありませんし、アイリスやリンドウには赤い花がなく、アサガオやシクラメンには黄色い花はありません。その理由は、これらの植物が合成できる色素が生まれつき限定されているためです。長年にわたる品種改良で新しい色の花(たとえば、黄色のバラ)が作出されてきましたが、限界もありました。バイオテクノロジーを利用すると、他の植物の色素を合成できる能力(遺伝子)を目的の花に与えることができます。たとえば、パンジーなどの青い色素を合成する遺伝子を用いて、従来にはなかった青や紫のバラ、カーネーション、キクなどが作出され、販売されています。黄色のアサガオやリンドウも開発されました。将来は花の色がもっと多彩になることが期待されます。

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