かずさ・千葉エリア平成21年度研究成果報告会

日 時: 平成22年3月2日 (火) 13:30〜19:00
会 場: ペリエホール大ホール
    
来賓挨拶 
  文部科学省科学技術・学術政策局 
科学技術・学術戦略官代理 総括係長 田 邊 郁 美 様よりご挨拶をいただいた。
基調講演 「疾患遺伝子診断の現状と課題対応について」
  東北大学大学院 医学研究科 遺伝病学分野 教授 松 原 洋 一 様
  日本における遺伝病検査の現状と課題について発表があった。 遺伝疾患のカタログには19,908種の疾患が記載されており、欧米では標準医療として約2,000種類の遺伝子診断が行われ定着している。 しかしながら、我が国では13種類の遺伝子検査のみが保険医療として認可されているに過ぎない。
演者らは、この様な現状を鑑み、NPO法人オーファンネット・ジャパンを立ち上げ、有料で遺伝子検査を受託する事業を開始している。 今後は、日本人の遺伝性疾患の頻度や遺伝子変異のスペクトラムをデータベース化し診断治療に役立てられる様にする必要性があることを訴えた。
【研究成果報告】 
 演題1:先端ゲノム解析技術を基礎とした免疫・アレルギー疾患克服のための産学官連携クラスター形成
  研究統括:千葉大学大学院 医学研究院長・医学部長 中谷 晴昭

平成21年度達成目標に対して個々のテーマの進捗状況が概説され、数値目標、定性目標ともほぼ達成できた事が報告された。
【研究成果報告テーマ1】「免疫・アレルギー疾患克服のための先端ゲノム解析基盤整備とその実用化研究」
  演題2:免疫・アレルギー疾患克服に向けた治療バイオマーカー探索のための技術基盤の確立
  報告者:(財)かずさディー・エヌ・エー研究所 副所長・ヒトゲノム研究部長 小原 收

合成樹脂製の血球分離チップおよび血漿分離チップの試作、親水化処理技術の応用、
タンパクアレイの試作等について成果を報告した。
 演題3:次世代高速DNAシーケンサーによる免疫・アレルギー疾患原因遺伝子探索拠点の形成」
  報告者:(財)かずさディー・エヌ・エー研究所 副所長・ヒトゲノム研究部長 小原 收

目的遺伝子濃縮技術の確立による遺伝子解析の著しい迅速化が可能になったこと、 オープンソース型次世代シーケンサーの導入と日本の優位性が出せる形での事業化についての提案、などについて発表した。
【研究成果報告テーマ2】「免疫関連難治疾患の治療効果判定・予後予測のためのバイオマーカーの探索開究」
  演題4:「免疫関連難治疾患の治療効果判定・予後予測のためのバイオマーカーの探索開発研究」研究総括
  報告者:千葉大学大学院 医学研究院 免疫発生学 教授 中山 俊憲

臨床試験計画の作成と倫理審査を終え、早いプロジェクトから臨床試験、サンプル取得、遺伝子発現解析に入っており、 癌の免疫細胞療法では、少数例の解析結果より3種のバイオマーカー候補を取得し、特許出願にいたったことが報告された。
 演題5:スギ花粉症の治療効果を予測するバイオマーカー探索
  報告者:千葉大学大学院 医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学 教授 岡本 美孝

スギ抗原エキスを用いた舌下免疫療法(週1回投与16週間)の2年間の結果を報告し、
2シーズン目に有意差が認められ、約60%の患者の症状が軽くなったことを報告した。
また、昨年開始した連日投与の舌下免疫療法試験では、有意な症状スコアーの改善が認められるとともに、ResponderとNon-responderの存在が認められ、 その差と相関する遺伝子についてマイクロアレイ解析を開始していると発表した。
 演題6:関節リウマチの治療効果を予測するバイオマーカーの探索
  報告者:千葉大学大学院 医学研究院 遺伝子制御学 教授 中島 裕史

IL-6受容体抗体アクテムラ8mg/kgを4週毎に最長6ヶ月点滴投与し、末梢血単核球およびCD4陽性T細胞の遺伝子発現を解析し、 著効・有効で発現が更新する遺伝子および低下する遺伝子を解析していると発表があった。
【研究成果報告テーマ3】「次世代ヒト疾患モデルマウス作製のための技術開発とその利用」
  演題7:遺伝子操作を加えることにより、ヒトにより近い免疫環境を再現する免疫不全マウスの作製
  報告者:(財)かずさディー・エヌ・エー研究所 
     ヒトゲノム研究部・細胞工学研究室 室長 舛本 寛

ヒト人工染色体作製にCenp-BとCenp-B boxの結合が必要なこと、自己脱落制御可能なHAC,HLAをES細胞に導入することに成功したことなどが発表された。
  演題8:第三世代造血免疫系ヒト化マウスの確立と免疫造血系機能の解析と臨床応用研究
  報告者:(独)理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター 
     免疫器官形成研究グループ  ディレクター 古関 明彦 

ヒト化マウスの免疫機能、HLA導入による免疫細胞分化の改善、NOD/SCIDから今まで採取できなかったES細胞取得に成功したこと等が発表された。