テーマ 31タンパク質を指定しないDNAがあります

タンパク質を指定しないDNAがあります。

 DNAを生きた細胞から抽出すると、ヒストンを含む多くのタンパク質はDNAから外れます。その結果、遺伝的な配列情報を保っている裸の長いDNAを得ることができます。このことは、染色体がDNAのひとつの連続した鎖であることを思い浮かべるのに役立ちます。DNA鎖に沿って連なっているものが遺伝子であり、特異的なタンパク質を作るための遺伝的な暗号を持つ特別な領域です。

 細菌の持つ遺伝子はDNA上に密に詰め込まれていて、ほとんどのDNA配列はタンパク質をコードしています。ところが、1960年代に行われた実験から、真核生物の持つDNAのかなりの部分がタンパク質をコードしない反復配列で構成されていることが分かりました。真核生物の遺伝子は長い非コードDNA(遺伝子間に存在する配列)の中に“島”のように点在しています。1970年代の研究から、イントロンと呼ばれる数多くの非コードDNA領域が遺伝子中にも存在し、タンパク質をコードしているエクソンと呼ばれる領域を分断していることも分かってきました。ヒトDNA中のタンパク質をコードしている部分の割合はわずか5%と推定されています。