私は、アルフレッド・スターテヴァントです。私はT.H. モーガン博士の研究室の大学院生でした。1913年に、私は自分の博士論文で、世界初の遺伝子地図を発表しました。 遺伝子地図のアイデアは、私の“上司(モーガン博士)”と、ベルギーの細胞学者F.A. ヤンセンスの実験について議論しているときに生まれました。 ヤンセンスは減数分裂の初期に、相同染色体が絡み合い、部分的に交換されることを見つけました。この過程は後に“乗換え”と呼ばれるようになりました。 #染色体交叉の電子顕微鏡写真 乗換えを分かりやすくするために、この電子顕微鏡写真を色づけして、相同染色体の一部に印をつけてみましょう。 これは二重交叉と考えられます。2カ所で染色分体が重なり、交叉の点の間の部分が交換されています。 #セントロメア、染色分体、交叉の点 モーガン博士は、乗換えのイベントは相同染色体の対立遺伝子を組換えることができることに気がつきました。彼は、彼の考えを描き表すのに、このボール図を使いました。 #モーガン博士のオリジナルから改変した図 乗換えが起こるとき、遠く離れた対立遺伝子は、乗換える見込みが大きいのです。より近くにある対立遺伝子は、乗換えがより起きにくくなります。私は、X染色体にある遺伝子のマップを作製するために、組換えデータを使うことを思いつきました。 私は、黄色い体(y)、白眼(w)、縮小翅(m)の3つの劣性の形質の遺伝子をマップしました。最初に、全ての劣性遺伝子(y, w, m)が一方のX染色体上にあり、優性遺伝子(B, R, L)がもう一方の X染色体上にある、ヘテロ接合のメスの系統を作りました。 #メス、茶色の体、赤眼、大きな翅 それから、ヘテロ接合のメスを、劣性遺伝子アリル(y, w, m)のX染色体をひとつだけ持つオスと掛け合わせました。 #オス、黄色い体、白眼、縮小翅 子世代のオスの表現型は、母親からもたらされたX染色体によります。父親から遺伝した”ニュートラル”な素性を持つ劣性X染色体に逆らって、母親のX染色体は子世代のメスの表現型も決めます。 私の期待通りに、半分のハエは優性の、残りは劣性の特性を示しました。もし同じ染色体上にある遺伝子が、いつもひとつのユニットとなって遺伝するとしたら、全ての子世代は、全て優性か全て劣性の表現型を示すだろうと考えたのです。 私は10,495匹のハエを調べました。実際に、子世代のおよそ2/3は全て優性か全て劣性の表現型を示しました。 #茶色の体/赤眼/大きな翅、 黄色い体/白眼/縮小翅//6,972匹 残りは優性もしくは劣性の形質が混ざって、または組み換わっていました。 #茶色の体/赤眼/縮小翅、もしくは、黄色い体/白眼/大きな翅//3,454匹 黄色い体/赤眼/大きな翅、もしくは、茶色の体/白眼/縮小翅//60匹 黄色い体/赤眼/縮小翅、もしくは、茶色の体/白眼/大きな翅//9匹 それぞれの混ざった表現型は、卵が作られるときに2つのX染色体の間で乗換えが起こることで説明がつきます。 大多数のハエは、3つ全ての特徴において優性か劣性でした。これはメンデルの法則で、乗換えが起きないとして予想されたものに一致します。 #乗換え無し 6,972匹 茶色の体/赤眼/大きな翅、 黄色い体/白眼/縮小翅 眼の色と翅の大きさの間での乗換えが比較的高い割合で起こったことは、これらが染色体上で離れていることを示しています。 #眼の色と翅の大きさの間での乗換え 3,454匹 茶色の体/赤眼/縮小翅 黄色い体/白眼/大きな翅 体色と眼の色の間での乗換えが低い割合であったことは、これらが比較的近くで連鎖していることを示しています。 #体色と眼の色の間での乗換え 60匹 黄色い体/赤眼/大きな翅 茶色の体/白眼/縮小翅/ 体色と眼の色、眼の色と翅の大きさの間の両方で乗換えが起こる、二重乗換えはきわめて稀です。 #体色と眼の色、眼の色と翅の大きさの間での乗換え 9匹 黄色い体/赤眼/縮小翅、 茶色の体/白眼/大きな翅/
モーガンと乗換えの遺伝的意味を議論したスターテヴァントは家に帰り、大学の宿題をしないで、最初のX染色体の遺伝子地図を描きました。
メンデルは自分の実験結果に基づいて、遺伝子は別々に伝わるという独立の法則を導きました。なぜメンデルは、“連鎖”した遺伝子をみいだせなかったのでしょうか?