テーマ 21RNAはDNAとタンパク質の間を仲介します
ポール・ザメクニックは、マーロン・ホーグランドと共に、タンパク質合成の研究に使用した無細胞抽出液を開発しました。彼らは、フランシス・クリックが、彼のセントラル・ドグマで予測したようなアダプターとして、tRNAを発見しました。シドニー・ブレナーは、mRNAが、DNAからリボソームに情報を運ぶ、不安定な仲介物であることを示しました。
シドニー・ブレナー(1927-2019)
シドニー・ブレナーは、南アフリカのジャーミストンで生まれました。15歳の時、ブレナーは南アフリカのウィットウォーターズランド大学に進む奨学金を獲得しました。そのころ、南アフリカの大学システムは開発途上で、ブレナーは分子生物学の課題で、多くの独立した研究や自習をしました。ウィットウォーターズランド大学を卒業した時、そこには、大学院の研究コースがありませんでした。ブレナーは、オックスフォードに応募して進学しました。そして、バクテリオファージについて、大学院で研究を始めました。
1953年、ブレナーは、ワトソンとクリックのDNA構造を見るためにケンブリッジ大学に招待されたグループの一員でした。これが、ワトソンと数多く行った打ち合わせや共同研究の最初でした。クリックとは、もっと多く行いました。
1954年に、ブレナーは博士号を授与され、ウィットウォーターズランド大学に教えに戻りました。現在まで彼は、遺伝暗号と情報伝達におけるRNAの役割の問題に取り組んでいます。1956年、ブレナーは、RNAネクタイクラブのメンバーに、“全てのオーバーラップする3つ組の暗号の不可能性について”という論文を送りました。これは、統計とタンパク質のアミノ酸配列を使って行った、3つのヌクレオチドがひとつのアミノ酸をコードしていることを示す、洗練された証明でした。同じ年、情報伝達の問題に同じように興味を持っていたフランシス・クリックは、ケンブリッジの英国医学研究審議会(MRC)の研究職に、ブレナーが就けるようにしました。
1957年、ブレナー、シーモア・ベンザー、フランシス・クリック、そしてレスリー・バーネットは、Nature誌にファージの突然変異の詳細なマッピングについて、論文を発表しました。遺伝子の突然変異とアミノ酸配列の変化を関連づけることで、遺伝子の情報とタンパク質の間に直線性があることを証明しました。ブレナーはそれから、DNA とタンパク質の間で、どのように情報が渡されるのかという問題に取りかかりました。1960年、ブレナー、フランソワ・ジャコブ、そして、マシュー・メセルソンは、メッセンジャーRNAの存在と機能を立証する、別の一連の実験をデザインし、行いました。
1960年代の後半に、ブレナーは発生の問題、特に神経系の発生に興味を持ち始めました。1968年、ブレナーは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)は、あまりに複雑だと判断し、線虫(Caenorhabditis elegans)を研究のモデル生物として選びました。C. elegansは今では、それ自体が研究分野になっています。そして1998年、線虫はゲノム配列が完全に決定された、最初の多細胞生物になりました。
1990年代に、ブレナーは、また別の生物、日本のフグ(Fugu rubripes)を選びました。フグは、ヒトとほぼ同じだけの遺伝子を持ちますが、ヒトほど多くの“がらくた“DNAを持ちません。1989年、ブレナーと共同研究者は、Fugu rubripes(日本のフグ)ゲノム配列決定プロジェクトを始めました[訳注:2002年完了]。
1998年、タバコ産業の巨大資本であるフィリップ・モリス社の寄付により、ブレナーは、カリフォルニア州バークレーに分子科学研究所(MSI)を設立し、所長になりました。非営利団体のMSIの役割の一部は、様々なゲノム配列決定プロジェクトからの情報の氾濫を処理することです。
ブレナーは旅行とおいしいワインが好きで、“Current Biology[現代生物学:英文の論文誌]”にLoose Ends[未解決事項]という、意見コラムを書いていました。
ブレナーは2002年のノーベル生理学・医学賞を、共同研究者のジョージ・サルトンとロバート・ホロヴィッツと共に受賞しました。3人はみな、線虫[Caenorhabditis elegans]というモデル生物を使って、発生生物学の分野で主要な研究成果を上げました。
マーロン・ホーグランドの父親は、研究者でした。彼は、実験生物学のためのウースター財団を創設しました。この研究所で開発されたものの中に、経口避妊薬があります。
ホーグランドとザメクニックは、タンパク質合成反応における分子を同定し、エネルギーが必要なことを示しました。もし彼らが、フランシス・クリックのアダプター仮説を知っていたら、もっと簡単に結果を得られたでしょうか?