テーマ 29DNAが折りたたまれて染色体になります

ロジャー・コーンバーグが、アーロン・クラッグと行った、クロマチンを形成するためにDNAに結合するヒストンの研究について説明します。

ハーイ、私はロジャー・コーンバーグです。 アーロン・クラッグと私は、ヒストンと呼ばれる一群のタンパク質がどのようにDNAと相互作用するのかに興味を持っていました。5種類の違うヒストンがあります。 [ヒストン] これらのヒストンは高等生物(真核生物)の細胞の核の中でDNAに結合し、クロマチン(“染色された物質”)を形成します。分裂期以外の細胞ではクロマチンは核の中でほぐれた状態に広がっています。 [核] [クロマチン] 細胞分裂の前期に、クロマチンは凝集し、私たちが染色体として知っている、目に見える構造物になります。この電子顕微鏡写真は分裂中期の細胞で、染色体は細胞の中央部に並んでいます。 [染色体] 真核生物細胞の核の中にヒストン・タンパク質が存在することで、DNAとタンパク質のどちらが遺伝物質か、ということが1940年代には論争となっていました。もちろん、最終的にDNAが遺伝物質としての特性を持つことが分かりましたが。 [ヒストン] [遺伝物質] しかし、後のX線回折の研究により、ヒストンはDNAらせんの構造形成に重要な役割を果たしていることが分かりました。モーリス・ウィルキンスを覚えていますか? 1964年、ウィルキンスとヴィットリオ・ルザッチは、クロマチンには100オングストローム(1 Å=10-10 m)間隔の繰り返しパターンがあることに気がつきました。この繰り返しパターンはDNAの繰り返しパターンとは違います。 [クロマチンの X線回折パターン] アーロン・クラッグも同じようなクロマチンのX線回折パターンを目撃しました。この繰り返しはヒストンがDNAを“パッケージする(詰め込む)”役割を担っていることを示唆しました。 私はディーン・ヒューイッシュです。私はライ・バーゴインです。 1973年、私たちが南オーストラリアのフリンダース大学にいる時に、DNAパッケージングの考えを支持する結果を得ました。私たちはラットの肝臓細胞からDNA分解酵素を分離し、これでクロマチンを分解しました。 [DNA分解酵素] [クロマチンDNA] 私たちはクロマチンの分解物をゲル電気泳動で調べ… …そして私たちは、規則正しいパターンを示すDNAバンドをゲル上で目撃しました。これが1973年に私たちが電気泳動で調べたゲルの写真です。 私たちはその規則正しいパターンが最も小さいサイズのDNA断片の倍数であることに気がつきました。後にこの最小断片は約200塩基対(bp)と測定されました。それゆえ、これらの繰り返しパターンは、 200 bp、400 bp、600 bp、800 bp、等々に相当しました。私たちは、ヒストンはDNA上に均一に分布し、ヒストンが結合する部位ではDNAは核酸分解から保護される、と結論づけました。 [クロマチンDNA] これらの結果は、ヒストンのない“裸の”DNAを分解したパターンとは全く異なります。裸のDNAを核酸分解酵素で分解すると何千ものサイズの違うDNA断片のスメア(特定のサイズのバンドパターンを示さない)を生じます。 [裸のDNA] [クロマチンDNA] X線回折パターンと核酸分解酵素の実験に基づいて、クロマチンは、DNAとDNAに巻かれたヒストン・コアであると提唱されました。 [ヒストン・コア] [ DNA] 核酸分解酵素による分解後に観察された200 bpの繰り返し構造は、それぞれヒストン・コアに巻き取られた200 bpのDNAに相当します。 [分解酵素切断位置] [ヒストン・コア] X線回折パターンから測定された100 Åは、ヒストン・コアとDNAの幅(直径)です。 [100オングストローム] 私と同僚はこのモデルを確認する実験を行い、コア(芯)の中でのヒストンの配置を明らかにしました。 [ヒストン・コア] 私たちは個々のヒストンをクロマチンDNAから精製しました。 [ヒストン] 私たちは、H2AとH2B、H3 とH4、がそれぞれ結合する傾向があることを発見しました。 H2A/H2B複合体にH3/H4複合体を混ぜて、これに裸のDNAを加えると、クロマチンと同じX線回折パターンが得られるでしょう。 更なる解析から、それぞれのヒストン・コアは、それぞれ2個ずつのH2A/H2B複合体とH3/H4複合体で、合計8個のタンパク質から成ることが分かりました。このヒストン・コアとこれに巻き取られたDNAをヌクレオソームと呼びます。 [ヒストン・コア] [ヌクレオソーム] これはクロマチンの電子顕微鏡写真です。このひも状のものはクロマチンの10 nm繊維です。ビーズ状のものがヌクレオソームです。 [10 nm繊維] ところでH1ヒストンはどこへ行ったのでしょうか?結局のところ、H1ヒストンはヒストン・コアの一部ではなく、ヌクレオソームとヌクレオソームの間に結合して、クロマチンに更に高次の構造を与えていることが分かりました。 H1ヒストンはそれぞれのヌクレオソームの外側に配置され、次のヌクレオソームのH1と相互作用します。 [ヌクレオソーム] 高い塩濃度では、10 nm繊維は更に凝集して30 nm繊維になります。 [ヌクレオソーム] [30 nm繊維] DNAらせんは元々ねじれています。ヌクレオソームを作るために更にねじれを加えると、ソレノイド構造であるDNAは超らせん構造になります。 [ヌクレオソーム] [H1ヒストン] [ソレノイド(らせん)] 更に他の機構も関わって、凝集した染色体構造が維持されます。 [染色体] DNAのループはいくつかの非ヒストン・タンパク質からなる骨組み/足場に結合します。この足場はヒストンが存在していなくても、染色体の形状を維持します。 [タンパク質の足場] 染色体は1本の連続したDNAです。この電子顕微鏡写真では、ヒストンを取り除いた後の1本の染色体からのDNA鎖を見ることができます。 1.8 mにも達するDNAがひとつの細胞の核の中にうまく収納できるように詰め込まれています。DNAはまず、ヒストン・コアに巻き取られて、ヌクレオソームと10 nm繊維を形成します。 [10 nm繊維] 10 nm繊維は更にコイル状に巻かれて、6ヌクレオソームで1回転しながら30 nm繊維を形成します。 [30 nm繊維] 染色体が凝縮するときには、30 nm繊維はタンパク質の骨組み/足場の上にループを作ります。

factoid Did you know ?

ロジャー・コーンバーグの両親は2人とも科学者です。父親のアーサー・コーンバーグは主にDNA修復に利用されるDNA合成酵素Iを単離しました。

Hmmm...

DNAが複製されたり、RNAが合成される時にヒストンはどうなるのでしょうか?