テーマ 38個体発生は細胞増殖と細胞死の調和で進行します

リー・ハートウェル ボブ・ホロヴィッツ マイク・ヘンガートナー スコット・レーベ リー・ハートウェルは、酵母をモデル系として使い始めたひとりで、細胞周期に関わる多くの遺伝子を同定しました。ボブ・ホロヴィッツマイク・ヘンガートナーC. elegans を使って、プログラム細胞死の機構を解明しました。スコット・レーベの研究は、細胞周期の制御がどのようにがんに関わっているのかを明らかにしました。

リーランド・ハートウェル(1939-)


リー・ハートウェル

 リー・ハートウェルは、ロサンゼルスで生まれました。彼の父は看板屋で、ハートウェルは学校から帰ると、父をよく手伝っていました。ハートウェルは、仕掛け、特に電気仕掛けのしくみを知ることに、興味を持って育ちました。この自然な好奇心は、彼が優等生だということを意味しません。彼は、そこそこ勉強もできましたが、高校を卒業するまで、自然科学に目覚めることはありませんでした。

 彼はカリフォルニア工科大学に合格し、最初は物理学を勉強しようと思っていました。しかし、DNAに興味が湧き、生物学専攻で大学を卒業しました。ハートウェルは博士号取得のために、マサチューセッツ工科大学に行きました。

 博士号取得後、ハートウェルはリナート・ダルベッコがいるところでの研究を希望し、ソーク研究所に行きました。ハートウェルは、ダルベッコが研究テーマのひとつとして、細胞分裂の研究をしたいと考えていることを知っていました。その頃ソーク研究所は、まだ未整備で狭苦しい状態でしたが、ハートウェルは、ダルベッコの指導で多くを学び、充実した博士研究員時代を過ごしました。

 ハートウェルはその後、カルフォルニア大学アーバイン校の助教に採用されました。彼はここで、酵母をモデル系として使い始めるという、リスクの高い決断をしました。当時、酵母を使う人は多くなかったのですが、ハートウェルは、細胞増殖の基礎的な課題を研究するには、より単純な実験系が必要だと考えたのです。ハートウェルは酵母遺伝学のパイオニアであり、細胞周期遺伝子と共に、タンパク質合成に関わる多くの遺伝子を、酵母を使って同定しています。

 1968年、ハートウェルはワシントン大学ゲノム科学科に移り、そこで、細胞周期遺伝子の研究のほとんどを行いました。彼は、1996年にフレッド-ハッチンソンがん研究センターに移るまで、ワシントン大学に居ました。彼の研究室では、進化過程で新たな種を生じる原動力となる、遺伝子の多様化に関する分子機構の維持とサポートを研究しています。

 1997年、ハートウェルは、ハッチンソンの所長兼理事長に指名され、今は名誉職として、がん研究における基礎-応用-治療分野の成果を統合することに力を注いでいます。1998年に彼は、その革新的先駆的業績により、アルバート・ラスカー基礎医学賞を受賞しました。ハートウェルは、2001年のノーベル生理学・医学賞を、細胞周期を定義した業績で分け合いました。2003年、ワシントン州知事ゲイリー・ロックは、州の最高勲章をハートウェルに贈りました。

 2009年、ハートウェルは、アリゾナ州立大学のオーダーメイド医療の教授で、バイオデザイン研究所に新設された永続的健康センターの共同理事長に指名されています。

factoid Did you know ?

C. elegans でプログラム細胞死を起こさなかった細胞は、その姉妹細胞と同じ運命を辿ります。余分な細胞が、害をなすようには思えませんが。

Hmmm...

ブログラム細胞死を起こさない C. elegans 変異株にできる“余分な”細胞は、神経細胞のことが多いのです。そんな線虫は、賢いのかな?