テーマ 23遺伝子はDNA上に散在します

フレデリック・サンガーフレデリック・サンガーはノーベル賞を(同じ分野で)2回受賞しました。タンパク質の配列決定と DNAの配列決定に対しての受賞です。

フレデリック・サンガー(1918-2013)

フレデリック・サンガー

 フレデリック・サンガーは、イギリスのレンドクームに生まれました。父親は医師で、フレッドも医学の道に進むものと期待されていました。サンガーは成長するにつれ、自然や科学にとても興味を持つようになりました。そしてケンブリッジ大学に進んだ時、彼は医学を学ばないと決意しました。彼は科学分野で仕事をした方が、問題を解決する人として、より良い機会に恵まれるだろうと感じていました。

 クエーカー教徒として育ったため、サンガーは戦争中、良心的兵役拒否をしていました。1939年に学士を取得した後、ケンブリッジ大学に残り、博士課程に進み、アルベルト・ノイベルガーの元で、アミノ酸の代謝の研究をしました。1943年に博士号を取得した後、サンガーは、A.C. シブナールとインシュリン中の遊離アミノ基の同定の研究を始めました。この遊離アミノ基を同定する過程で、サンガーは、アミノ酸に順序をつける方法を見出しました。彼はタンパク質の配列を得た最初の人でした。その研究によって、サンガーは、タンパク質は分子が順番に並んだものであることを証明し、それから類推して、これらのタンパク質を作っている遺伝子やDNAも、順番、もしくは配列を持っているに違いないと推定しました。サンガーは、タンパク質の構造の研究で、1958年にひとつめのノーベル化学賞を受賞しました。

 1951年までに、サンガーはケンブリッジ大学の英国医学研究審議会(MRC)のスタッフになりました。1962年、彼はMRCからケンブリッジの分子生物学研究所に移りました。そこにはフランシス・クリック、ジョン・ケンドリュー、アーロン・クルグ、その他の人が皆、DNAに関連する問題について研究していました。彼にとって、DNA配列決定の問題を解決することは、タンパク質配列決定の研究からの自然な流れでした。サンガーは、最初、 RNAの配列決定法を研究しました。RNAの方が小さかったからです。結局、これがDNAに応用可能となり、ついに今日最もよく使われている、ダイデオキシ法に辿りつきました。サンガーは1980年に2回目のノーベル化学賞を、ウォルター・ギルバート、ポール・バーグと共に受賞しました。サンガーとギルバートは核酸の塩基配列の決定について、ポール・バーグは組換えDNAの研究への貢献が受賞の対象となりました。

 サンガーは1985年に引退し、ほとんどの時間を庭仕事に費やしました。彼は、研究以外の生活面で支援してくれた妻、マーガレット・ジョアンに大きな信頼を寄せていました。1992年、ウェルカム・トラスト(医学研究支援団体の1つ)とMRCは、サンガー・センターを設立しました。これはゲノムから得られる知識を高めるための研究センターです。サンガー・センターはヒトゲノム計画の主要なシーケンシング・センターのひとつでした。また、他の多くの生物のシーケンシング・プロジェクトがサンガー・センターで進行中です。誰に聞いても、サンガーは本当の“紳士”であり、非常に礼儀正しく、魅力的な人でした。

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フレッド・サンガーは同じ分野でノーベル賞を2回以上受賞した、選ばれたわずかな人たちのうちのひとりでした。ジョン・バーディーンは物理学賞で2回、国際赤十字協会は平和賞を3回受賞しました。

Hmmm...

GCヌクレオチドの含量の高い領域は、AT含量の高い領域よりも配列決定が技術的に難しいのです。なぜこれが事実だと思いますか?