テーマ 27突然変異により遺伝情報が変化します

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ハーマン・マラーは、X線で誘発される突然変異の研究により、1946年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。シーモア・ベンザーは、遺伝学を使って、突然変異はDNA配列の変化によりもたらされることを証明しました。

　ハーマン・マラーは1890年にマンハッタンに生まれ、1m58cmの科学マニアに育ちました。父親は、マラー鍛冶工芸場で彫像を鋳造していましたが、その社会主義的な理想と科学に対する愛情はハーマンに影響を与えました。少年の頃、ハーマンは、夏にはアディロンダック山地でハイキングを楽しみ、夜は望遠鏡を覗きながら、他の惑星では生命体はどのように存在しているのかを思索していました。

　1907年にモリス高校を16歳で卒業した後、マラーはコロンビア大学に入学し、新興分野である遺伝学に惹きつけられました。

　彼は大学院もコロンビアに残り、T.H. モーガンのショウジョウバエの部屋で研究を続けました。マラーはモーガンの他の大学院生と共に、ハエに住みかを与えるために、アパートの階段から牛乳瓶を盗みました。しかし、マラーは、モーガンやその学生のアルフレッド・ステートバントと衝突しました。マラーは、彼らが発表した論文の中で、自分のアイデアが十分に認知されなかったと感じたのでした。

　その結果、自身の論文以外の、ハエ部屋から出た論文の中にマラーの名前が現れることは少なくなりました。ある論文の中で、マラーは、ひとつの遺伝子の突然変異によって他の遺伝子の発現が変化することがあることを示しました。これは、多くのハエの特徴がいくつかの互いに相互作用している遺伝子によって決まることを示唆したものでした。彼は学位を取得した後の1915年に、研究室を去りました。そして最終的にテキサス大学の教員になりました。

　1920年代に、マラーは、X線によって突然変異が誘発されるというノーベル賞の対象になった研究を行い、すぐに有名になりました。マラーは、自分の名声を使って、治療にX線を無節操に使わないよう警告しました。しかし、彼の警告にもかかわらず、一部の医師は、不妊女性の排卵を促すためにX線照射の処方すら行いました。彼の警告は多くの医師を怒らせ、また、おしなべて無視されました。

　マラーの社会主義への率直な考え方は、テキサス州ともトラブルを起こしました。彼は学校での共産主義の新聞の発行を援助し、FBIが彼の活動を追跡しました。大恐慌の間にアメリカの社会は逆行していると感じて、マラーは1932年、ヨーロッパへと旅立ちました。

　1934年にソビエト連邦に移り、マラーは社会主義者として振舞ってはいましたが、彼の共産主義への共感は、収まったように見えました。進歩的な社会に身を置いた彼は、最初は幸せで、友好的な人たちや集団農場の労働者の自発性を褒めたたえる、大衆向けの記事を書いていました。しかし、スターリンの警察国家により、進化についてのラマルク説が前面に押し出され、遺伝学が攻撃されるようになると、彼は不幸になっていきました。この国家は、彼の研究室で働く人を決め、彼にドイツかロシアの亡命者の研究を参照・引用するよう命令しました。1937年に彼が去るまでに、彼の学生や共同研究者の何人かが“消える”か、シベリア送りになりました。

　マラーはスペインに8週間とどまり、輸血のために、殺されてから間もない兵士から血液を得る仕組みを作り上げる国際旅団［訳注：スペイン内戦時に編成された外国人部隊］を支援しました。それから、エジンバラ大学で仕事をし、X線や他の突然変異原であるUVやマスタードガスについての研究を続けました。

　第二次世界大戦により、1940年にマラーはスコットランドを去ることを余儀なくされ、1945年、最終的に彼はインディアナ大学で終身職を見つけました。1年後、マラーは突然変異を誘発するX線の研究でノーベル賞を受賞しました。彼は、この機会を利用して、X線照射の害について大衆の知識が増えることを強く求め続けました。

　それまでのキャリアを通じて、マラーは、科学者は大衆の教育に関わるべきだと考えていました。放射線の影響に対しての率直な物言いだけでなく、テキサス州教育委員会の進化への非難に対しても闘いました。彼は人種差別や階級差別を助長するアメリカの優生学運動を批判していましたが、優生学については自分の意見をより強く表明していました。そして、遺伝病のある家族に対して、ボランティアの人工授精による出産を勧めました。

　マラーは1967年に鬱血性心不全で亡くなりました。