テーマ 36細胞ごとにさまざまな遺伝子が活性化されます

イゴール・ダヴィド トム・サージェント パット・ブラウン スティーブ・フォダー イゴール・ダヴィドトム・サージェントは、cDNAサブトラクション法を用いて、遺伝子発現変動を解き明かす研究を初めて行いました。パトリック・ブラウンスティーブ・フォダーは、DNAアレイやジーンチップ®を用いて、ゲノムを解析する方法を変えました。

トーマス・ディーン・サージェント(1953-)


トム・サージェント

 トム・サージェントは、インディアナ州インディアナポリスに生まれました(DNAと同期[訳注:DNAの二重らせん構造が明らかになった1953年の生まれであることから])。子供の頃から彼はいつも科学に興味を抱いていました。彼が12歳の頃には、家族ぐるみの友人が、彼にジェームズ・ワトソンの“遺伝子の分子生物学”という教科書の初版を贈りました。サージェントは、大学生レベル用の文章を数ヶ月間読みふけ、その概念を学びました。

 サージェントは、生物学はとても魅惑的な学問であることを知り、インディアナ大学では、生物学を専攻しました。大学卒業後、カリフォルニア工科大学大学院へと進みました。この時期、遺伝子クローニングは、“新”技術であり、トム・マニアティスが、カリフォルニア工科大学に着任しました。彼は哺乳類の遺伝子を最初にクローニングした研究者で、サージェントを含む多くの大学院生が刺激を受け、遺伝子クローニングプロジェクトにシフトしました。サージェントは、ラットの血清アルブミン遺伝子のクローニングと特性に関する研究で、1981年に博士課程を修了しました。

 カリフォルニア工科大学大学院で、サージェントはマーク・デービスやデービッド・コーエンらの研究仲間と共に、遺伝子の発現変動に興味を抱くようになりました。博士研究員の研究では、発生の異なる時期において発現している遺伝子のライブラリーを、容易に作製することに適した生物を探しました。カエルの胚で発生学を研究していた、イゴール・ダヴィドに彼の考えを伝えました。ダヴィドは、すぐにサージェントを博士研究員として雇用しました。彼らはカエルのmRNAを利用したサブトラクティブライブラリーという、クローニング手法を開発しました。それとほぼ同じ頃に、デービスとコーエンは、T細胞に特異的に発現する遺伝子を探索するために、類似の技術を用いました。サージェントとダヴィドは、先に彼らの成果を発表しましたが、当時はクローニングされていた遺伝子が皆無であったため、彼らの作製したライブラリーには、同定可能であった遺伝子があまり存在せず、それらのほとんどが“未知”遺伝子といくつかの表皮ケラチン遺伝子でした。これらの“未知”遺伝子は、以降の研究によって、ホメオボックスやその他の転写調節遺伝子であることが分かりました。

 サージェントは、今現在も、カエルで最初に形成される組織である表皮組織の発生に関わる研究を続けています。サージェントは、現在はNIH[国立衛生研究所]・ NICHD[国立小児保健発育研究所]の分子遺伝学研究室の脊椎動物発達セクションにおける微生物学主席研究員です。彼はまた、ジョージ・ワシントン大学で遺伝学を教えており、趣味の木工細工をすることで、余暇を過ごしています。

factoid Did you know ?

ジーンチップ®技術は、1塩基の変異を検出できるほど高精度ですが、そのためには、ハイブリダイゼーションの条件が最適化されていなければなりません。

Hmmm...

A-Tペアの間には2つの水素結合が存在し、G-Cペアの間には3つの水素結合が存在します。これは、ジーンチップ上での、サンプルのハイブリダイゼーションにどのような影響を及ぼすのでしょうか?